タイトルは今時のネットコラムのようで微妙ですが💦
齢80を過ぎた写真家ソールのインタビューから
彼の足跡を追ったドキュメンタリー
着古したシャツに
尺の足りないマフラーを首に巻き
あるときは帽子を被り
もっさりと喋り
よく笑う
皮肉めいていながらも
どこか憎めない。
その風貌はすっかり街に溶け込む
普通のおじいちゃんなのだけれど、
インタビュー映像の合間に写る彼の作品は
思わず魅入ってしまうほど美しい
もうひとつ私が感動したことは
彼の写真家としての感性が
1950年代「Harpe's BAZAAR」の表紙から始まり
デジタルカメラを手にし、散歩がてら街を撮っていた
晩年の写真まで全く色あせる事がなく
(ある一時期だけピークだった、ということなく)
瑞々しく私を刺激した事である。
インタビューでソールは
美しさの追求について語る場面があり
その言葉通り
彼は自分の感じる美しさを最後まで追い求め
その軸はブレることがなかった。
たくさんのお宝が眠った(本人はそれを否定していたが)
無秩序に散らかった部屋の中で
地位や名声や権威というものが存在する世界から一線を画し
のんきに、思うままに暮らすソールだが
先立った妻であり、画家であるソームズについて語るときは
夫として(男として)彼女へのにじみ出る後悔や、変わらぬ思慕、敬意がよく伝わってくる。
ほろ苦く、ほのかに甘いビターチョコレートのように。
わたしは彼の写真に出会えて幸せだ。
彼の写真はわたしの心を捉え
雨が服に染みていくように
静かだが美しい瞬間(とき)を与えてくれる。
たぶんこの先もずっと。